株式会社サンギ

研究開発

デンタル

ハイドロキシアパタイトによるデンタルイノベーション

高機能歯みがき剤のパイオニアとして、サンギは常に新しいことに挑戦しています。デンタル部門の研究は、二つの流れで進めています。

ひとつはコンシューマー市場向けの製品開発・改善であって、歯をもっと強く、もっと白く、もっと早く輝くようにできる医薬部外品歯みがき剤の開発を目指しています。

もうひとつは、歯科医院向けの新製品として、益々重視されてきた口腔衛生や予防歯学に役立つHAPに基づく歯科材料や医療機器の開発です。

いずれの研究もHAPナノ粒子の歯に対する作用が中心であり、エナメル質初期う蝕の再石灰化、表面のミクロの傷の充填、むし歯や歯周病の原因菌の吸着除去、露出された象牙細管(知覚過敏の原因)の封鎖、そして歯本来の白さの維持・回復特性に基づいたものです。

このようにサンギは、HAP配合の新しいオーラルケア製品の開発を通じて、口腔の健康にイノベーションを起こします。

1.歯みがき剤・化粧品の開発

歯みがき剤・化粧品の開発

歯みがき剤の開発として、ナノ粒子薬用ハイドロキシアパタイト(ナノ<mHAP>)の効果がさらに向上される新規処方に取り組んでいます。

そのひとつとして、食品、化粧品、医薬品などで扱われている材料から候補物質を選び出し、ナノ<mHAP>と組合せたときの促進効果を調べています。

この効果を調べる再石灰化試験として、ウシやヒトの抜去歯に人工的に初期むし歯を起こし、これをナノ<mHAP>と候補物質との製剤で処理しています。
その後、被験歯を約100μmほどの薄い切片に調整し、軟X線撮影を行い、初期むし歯にどの程度ミネラルが補給されたかを画像解析装置で確認しています。

また、実験的にダメージを与え、白さや光沢が失われた歯面を、ナノ<mHAP>と候補物質との製剤で処理し、その効果を走査型電子顕微鏡やプローブ顕微鏡などで観察し、歯面の微細構造や白色度と光沢度を測定して評価しています。
同じ物質でも性質の異なる材料や配合量の違いにより、ナノ<mHAP>の作用に対する促進効果が異なります。

このように、常に従来品よりも優れた自社製品を一般のお客様に、そして相応しい特徴をもったOEM製品をお取引先様にご提案できるように努めています。

さらに、ナノ<mHAP>そのものの改良にも常に取り組んでいます。
なぜなら、HAPは合成方法によって粒子形態や吸着特性などの変更が可能であり、従来の効果の向上だけでなく、これまでに確認されていない性質を見出せる可能性があるからです。

HAPの改良試作を通して、従来の再石灰化によるむし歯予防や美白効果を向上させることに留まらず、全身の病気と関わりのある歯周病や高齢者の誤嚥性肺炎の要因とされている微生物の吸着除去、さらには知覚過敏症の緩和といった、むし歯以外のお口の病気への応用も試みています。

そして、口腔ケア以外に製品開発を進めているのが、化粧品分野における洗顔料などのパーソナルケア製品です。これは、基礎研究において明らかになった、HAPの余分な皮脂を吸着除去する性質を応用したものですが、サンプルワークを繰り返し行って、機能面だけでなく使用感についても、HAPを配合した製品ならではの良さをお客様に感じていただけることも目指しています。

2.歯科用製品の開発

サンギはHAPの様々な特性を生かし、歯科医院向けの歯科材料や医療機器の開発に取り組んでいます。

これらは前例のない、独創的なものがほとんどであるため、ラボ実験や臨床試験のデータが重要であり、薬事承認申請には相当な時間がかかります。

製品開発の例として二つご紹介します。

菌除去システム (BRS)

菌除去システム (BRS)

むし歯に導く様々な原因の中で、いわゆる「むし歯菌」Streptococcus.
mutans(ミュータンス菌)が主な原因菌とされています。

菌除去システム (Bacteria Removal System/BRS)の目的は、同菌を
口腔内から安全に除去することで、口腔内細菌層全体におけるその菌の割合を減らし、菌層のバランスを整え、むし歯になりにくい環境にすることです。

そのために、むし歯菌に対する吸着特性を高めた新たなナノHAP製材を開発し、歯科医院で専門的な歯面清掃(Professional Mechanical Tooth Cleaning/PMTC)を行った後に、患者さんに作成した菌除去専用のマウスピース(歯科用各個トレー)に製材を塗布し、就寝前の歯みがき後に、1回5分間、歯面に作用させます。

日本大学松戸歯学部で行った臨床試験において、これを1週間続けた結果、口腔内におけるむし歯菌の割合が低下し、その状態が2カ月間ほど継続したことが確認されています。

なおこのHAPによる菌除去システムは、殺菌剤などの除菌方法と比較して、アレルギー反応や耐性菌の出現などがなく、安全で環境と身体に優しいシステムです。

HAP成膜形成による歯科治療システム (PJD)

HAP成膜形成による歯科治療システム (PJD)

新たな歯科治療システムとして開発を進めているパウダージェットデポジション(Powder Jet Deposition/PJD)法は、歯に対してHAPを吹き付けて直接充填修復することができる画期的な新技術です。

本システムは、精密加工技術分野で開発された微粒子を対象物に対して高速噴射して付着させる技術を歯科の分野に応用したもので、新たに設計開発された歯科用PJD装置(ユニット及びハンドピース)と、PJD専用のHAP粒子からなるシステムです。

本システムを用いて、エナメル質と象牙質にHAP成膜層を形成させた場合、走査型電子顕微鏡の観察では歯質とHAP成膜層との界面には間隙がなく、一体となっていることが確認されています。

生体親和性の高いHAPを用いるこのシステムは、将来歯科の治療において窩洞の充填、露出した象牙細管の封鎖、変色した歯の色調改善など、多くの治療法への応用が期待できます。

本研究は、産学官連携プロジェクトとして、サンギが独立行政法人科学技術
振興機構(JST)と東北大学大学院の工学研究科と歯学研究科と共同で開発を進めています。

PJD専用のHAP粒子を、歯科用のPJD装置を使い吹き付ける

PJD専用のHAP粒子を、歯科用のPJD装置を使い吹き付ける

学術論文